心地よいホワイトノイズは、より良い睡眠とリラックスを求める人々にとって、世界中の家庭で当たり前となっています。ホワイトノイズアプリは、幅広い周波数で音を発生させることで騒音を遮断し、睡眠を促す落ち着いた環境を作り出します。DoubleVerify (DV) のMuck Rackの分析によると、過去1年間で200近くもの記事がさまざまなホワイトノイズアプリを推奨しています。

しかし、ホワイトノイズアプリの人気が高まる一方で、マイナス面もあります。オーディオストリーミング業界の拡大に伴い、それを悪用しようとする人々も増えています。実際、ホワイトノイズアプリを使用してオーディオストリーミング詐欺や広告費の流用が行われているという憂慮すべき傾向が明らかになっています。

深刻化するオーディオ詐欺

昨年だけでも、DVはオーディオストリーミングをターゲットにした2つの大きな世界的な詐欺スキームを確認しました: BeatStingFM Scamです。これらの不正行為は、専用サーバーなどの巧妙な方法を用いてオーディ オトラフィックを改ざんし、多額の金銭的損失をもたらします。これらのスキームは、ピーク時には、アドベリフィケーション(検証)によるプロテクション(保護)が行われていない広告主に対し、合計で毎月100万ドル以上の損害を与えていました。

さらに、 DV 2024年版グローバルインサイトレポートによると、2023年、ストリーミング・プラットフォームにおけるボット詐欺は驚くほどのスピードで拡大しており、その亜種は269%増加しました。これにより、ストリーミング詐欺スキームの亜種は前年比で58%増加しました。

モバイルやコネクテッドTV(CTV)でも同じパターンが見られ、詐欺グループは常に新しいチャネルに引き寄せられています。

例えば、「Deep Sleep」や 「Deep Sleep Kids」といったアプリは同じ会社によって開発され、1万回以上ダウンロードされています。Googleのダウンロードデータによると、それぞれ「E」(全年齢対象)と評価され、5つ星の評価を獲得しています。

表面的には、これらのアプリは安全で合法的に見えます。しかしDVは、広告が実際には再生されることなくオーディオインプレッションが販売されることで、偽のストリーミングデータを生成していることを発見しました。開発者は、CTVで発見されたサーバーサイド広告挿入技術(SSAI)を利用した詐欺に似た手法を使って実行しています。

どう機能しているのか:フラウド(詐欺)の検知

詐欺グループはますます巧妙になってきており、住居用IPアドレスのなりすましやオーディオアプリの偽造といった手口を使っています。偽のSSAIサーバーを設置し、オーディオ広告のリクエストをねつ造することで、アクティブユーザーや広告主にとって魅力的な在庫があるように見せかけます。そして、これらの不正リクエストは、サプライサイドプラットフォーム(SSP)、アドエクスチェンジ、アドネットワークに送信されます。広告主がこの在庫を落札すれば、実際には存在しない広告枠に広告費が無駄に使われることになります。このような不正行為は、広告主の資金を浪費するだけでなく、合法的なオーディオチャネルやパブリッシャーからも資金を奪うことになります。

このような不正行為を発見する方法の一つは、ホワイトノイズや睡眠アプリの使用パターンを見ることです。これらのアプリは通常、夜間に多く使用されています。しかし、詐欺アプリは日中に使用量が急増するため、実際の使用パターンと一致しません。

以下のチャートは、不正な睡眠アプリが、ヨガ音楽、R&B音楽、アーケード音楽、エクササイズ音源など、他のアプリと同じトラフィックパターンを示していることを表しています。これらのアプリはすべて、インプレッション数の急上昇と急降下を同時に示しており、これはこれは偽トラフィックの典型的なサインです。

正規のR&B音楽アプリの利用ピークが午前11時になる可能性は非常に低く、さらに、エクササイズ音楽アプリや睡眠アプリの利用パターンと完全に一致する可能性はほとんどありません。このような高い相関が見られる場合、説得力のある説明として考えられるのは、これらのアプリのオーディオトラフィックがスクリプトやボットによって生成された偽のインプレッションであるということです。

 

下図は、正規の睡眠アプリの動作を緑色、偽アプリの動作を紫色で示しています。

DV Fraud Labは、機械学習テクノロジーと手動レビューを使用してこのオーディオストリーミングの詐欺スキームを検出し、広告が配信されていないことを明らかにしました。

これまでに、この種のSSAI詐欺を行っている数百ものロングテールのオーディオ(音声)アプリを特定しています。DV Fraud Labでは、年間1,000を超えるアプリが偽のインプレッションを生成し、正規のトラフィックに紛れ込もうとしているという実態を検知しています。

オーディオ詐欺への対応

オーディオストリーミング分野での不正行為を発見することは、一見無害だと思われるホワイトノイズアプリが関与している場合、非常に重要な課題です。2023年から2024年にかけて、このグループでは数十のアプリが発見され、無防備な広告主が各アプリで毎月平均45,000以上のインプレッションを購入していました。オーディオのCPMは、控えめに見積もっても5~7米ドル(多くの場合20米ドル以上)であり、1アプリあたり少なくとも月額22万5,000米ドルの影響があると推定されます。これだけ多くのアプリが存在し、人気を集めていることを考えると、不正検知の重要性が改めて浮き彫りになります。

この状況は、広告主が投資を保護するために、オーディオストリーミングトラフィックの検証と監視を徹底する必要性を浮き彫りにしています。正規のアプリの開発者にとっては、こうした不正行為が本来であれば自分たちに支払われるはずの広告費を横取りされる行為です。また、ユーザーにとっても、信頼できる開発者のホワイトノイズアプリを選ぶことの重要性が一層明確になりました。アプリの広告詐欺は、予期しないバッテリー消耗やデータ使用量の増加につながる恐れがあります。さらに重要なことは、不正行為は、成長中のオーディオストリーミング市場において市場の信頼を損ない、将来的により大きなコストが発生する可能性もあります。

オーディオストリーミング市場が成長・進化し続けるにつれて、不正行為への対策も重要になってきています。DVは、最前線でこれらの脅威を検知・低減し、デジタル広告エコシステムのすべての関係者にとってより安全な環境を提供しています。