DV Fraud Labは、洗練されたAI技術、独自の技術、分析ツールを駆使し、業界で最も巧妙な不正スキームを発見しています。1日あたり20億以上のインプレッションを分析するDV Fraud Labは、高度な分析と機械学習を搭載したモデルを使用して、データの異常、潜在的に改ざんされたトラフィックや不正なアクティビティの兆候を特定し、分析します。

DV Fraud Labは、サイバーフラウド防止コミュニティのデータサイエンティスト、数学者、アナリストからなる専門チームによって運営されています。DVのAsk the Experts(専門家に聞く)シリーズの今回は、フラウドアナリストのGal Badnaniが登場します。Galはストラテジック・パートナー・チームの一員で、主要なプラットフォームや戦略的なクライアントからの問い合わせのサポート、コマーシャル・チームへのデータに基づく積極的なインサイトの提供、新しい無効トラフィック(IVT)の傾向と最適化機会の発見、そして最新のプロジェクトであるMade For Advertising(以下、MFA)を担当しています。

以下では、Galが最近発見したフラウド(不正)サイトのひとつと、広告主が将来に向けてどのように対策を講じるべきかについてご紹介します。

 

この分野で仕事を始めたきっかけは?

元情報リサーチャーの私は、1年以上前にDV Fraud Labにフラウド・アナリストとして入社しました。チームの一員として、フラウド(不正)を発見し防止するために一緒にブレインストーミングや調査をするのが大好きです。

 

どこを拠点に、どのようにDVをサポートしていますか?

イスラエルのテルアビブを拠点に、世界中のDVクライアントやパートナーをサポートしています。DV Fraud Labは、世界中の様々なDVチームとコラボレーションしています。DVがクライアントに市場で最高のプロテクション(保護)を提供できるよう、あらゆる市場の様々な不正スキームを分析し、インサイトを提供しています。

 

最近発見した不正スキームは何ですか?

DV Fraud Labは、ある疑いのあるウェブサイトを分析・検証していたところ、複雑な偽装の実態を明らかにすることにつながる、異例の発見をしました。さらに深く掘り下げていくと、一見何の変哲もないように見えるウェブサイトのグループを発見したのですが、それらは後にアドフラウド(広告詐欺)であり、クライアントのブランドセーフティにとって有害であると判明しました。以下では、これらのサイトでフラウド(詐欺行為)が疑われた理由、このスキームの背後にある動機、そしてフラウド(詐欺行為)が広告主に与えた影響についてお話しします。

 

この件に不正があるかもしれないと疑った理由は?

問題のサイトは、レシピ、動物、ペット、自動車のコンテンツを掲載しており、すべて同じ事業体が所有・運営し、共通のレイアウト、テンプレート、記事を共有していました。以下は、レビューした時にほぼ同じコンテンツを掲載していた2つのウェブサイトの事例です(スクリーンショットはサイトがまだアクティブだった時に撮影されたもの)。これらのサイトは、正規のサイトから画像をコピーし、不正にあたかも自分たちのサイトであるかのように装っています。

画像に見られる類似性から、このサイトはEpicuriousというサイトからコンテンツをコピーした可能性が高いと考えられます。

この複製されたコンテンツの事例は、必ずしも広告インプレッション詐欺を示すものではありません。実際、多くのMFAサイトは、トラフィックを改ざんすることなく類似のパターン傾向を示しています。しかしながら、これらのウェブサイトが不正な無効トラフィック(IVT)の発生源である可能性を疑い始めたのは、ウェブサイトが英語で書かれているにもかかわらず、そのトラフィックの大半は主にスペイン語やポルトガル語を話す南米や中米から発信され、やや異常な傾向に気づいた時でした。

これらの比較的新しいウェブサイトの人気が急上昇しているのを見て、私たちの疑念はさらに強まりました。データを見ると、開設後1ヶ月だけで数百万インプレッションを記録していました。通常、人気を獲得し、オーガニックに伸びるには時間がかかるため、このような急速な成功は驚異的なことです。

さらに、トラフィックのパターンも奇妙で、料理やお菓子作りには変な時間帯である夜間にユーザーが特に活発に動いているようでした。

もう一つの発見は、これらのウェブサイトの訪問者間の興味深いつながりです。ひとつのサイトに頻繁にアクセスするユーザーは、同じグループ内の他の多くのサイトにも繰り返しアクセスしていることがわかりました。お菓子作りや料理、車のレビュー、ペットの世話といった無関係なトピックが同じユーザーを虜にしているという事実は、このトラフィックが不自然であることを示唆しています。

私たちの注意を引いた最も興味深い発見は、これらのサイトが日本発祥のアニメ・コミックの一種であるマンガに分類されているという事実でした。この状況をより深く掘り下げ、調査し、理解することが私たちの役目でした。


実際に何が起きたのか?

ひとつのサイトが際立っていたのは、そのサイトグループの中で、全てのユーザーが訪問していたからです。このサイトは非常に人気があり、月間インプレッション数が2億近くあり、スペイン語でした。サイトの分類は、著作権侵害(CRI)、違法コンテンツ、アダルトコンテンツなど、私たちが注目している項目をすべて満たしていました。このサイトの特徴は、レビューしたサイトグループと相関しており、このスキームと強い関連があることが示唆されました。

私たちは、この疑わしいサイトを訪れたユーザーの行動をシミュレーションし、このスキームがどのように機能するかを発見しました。マンガサイトにアクセスすると、マンガのコンテンツは確かに表示されたものの、調査した「無害な」サイトグループのドメインで提供されていました。

以下のように、動物やペットに特化したサイトを直接閲覧すると、確かに動物やペットに関するコンテンツが表示されます。


直接サイトを閲覧する:

しかし、Fraud Labでシミュレーションしたユーザージャーニーから同じサイトを閲覧すると、動物やペットとは関係のないマンガコンテンツが見つかりました。


シミュレーションした不正スキームで同じサイトに到達:

さらに調査を進めた結果、このマンガサイトが改ざんした40近くのサイトを発見し、広告インプレッション詐欺(以下、AIF)として分類することができました。

アプリまたはサイトをAIFに分類するためには、問題のサイトまたはアプリで配信された広告インプレッションに基づいていることに着目することが重要です。サイトまたはアプリがAIFに指定された場合であっても、そのサイトまたはアプリのパブリッシャーまたは開発者が、AIFである活動を認識していた、または故意に関与していたと判断するものではありません。

AIFの認定は、様々な法律、法令、条例で定義されている詐欺行為、または裁判所やその他の法的手続きで慣例的に使用されている詐欺行為であると判断するものではありません。これは、メディア評価評議会(MRC)のInvalid Traffic Detection and Filtration Standards Addendum(無効トラフィックの検出とフィルタリングの基準補遺)に準拠し、業界基準に従った広告測定の目的のために厳密にカスタム定義されたものです。

DVがサイトやアプリにAIFのフラグを立てても、広告主やメディア販売者がパブリッシャーと協力することを妨げるものではありません。広告主およびメディア販売者は、AIF認定に対して自由裁量権を有します。DVは、標準的なプロセスの一環として、約90日ごとにAIFに認定されたアクティブなサイトやアプリを再審査する措置を講じています。AIF認定が解除されるのは、再審査の過程で、問題のサイトまたはアプリがAIF認定の要件を満たさなくなった場合に限られます。


なぜそのようなことが行われるのか?

マンガサイトは、不適切なコンテンツやコピーされたコンテンツとして、しばしばフラグを立てられます。ブランドセーフティを重視する広告主は、そのようなコンテンツと自社のブランドを関連付けることをためらいます。

こうした阻害要因を回避し、広告から収益を上げ続けるために、マンガサイトはドメインを偽装し、あたかも無害なサイトに広告を出していると広告主に思わせることに目をつけました。

2つ目の意図は、収益の最適化でした。マンガサイトへの広告は通常、安価な在庫を提供します。コンテンツとユーザーを他のドメインにリダイレクトすることで、サイトオーナーは各広告に高い料金を請求できる一方、サイトの人気と高いトラフィックを利用することが可能となりました。


不正スキームは広告主にどのような影響を与えるのか?

このスキームによって、広告主は適切な関心を持つユーザーにリーチできていると信じ込まされていました。しかし、広告主は、自ら進んでマンガサイトを訪れ、コンテンツを消費しているユーザーに広告を表示していたのです。その結果、広告主はターゲットにしたくないユーザーに表示された広告の料金を支払わなければならなくなり、収益が減少することになったので す。このような不正スキームは、広告主がブランドセーフティやスータビリティ(適合性)違反の被害者となる環境も作り出してしまっています。このようなサイトに広告を掲載することで、広告主は知らず知らずのうちに、安全でない、あるいは不適切なコンテンツと関連付けられてしまう可能性があるのです。

このような複雑なスキームに対して、クライアントを保護するDVの使命はさらに重要になっています。デジタルの世界に潜む陰謀を解き明かすことで、私たちは大切な広告主を経済的損失から守り、ブランドの評判を守ることができるのです。そして、より良いインターネットに貢献するチームの一員であることを誇りに思います。


広告主がメディアへ投資を保護するための最善の方法については、
不正スキームの最新トレンド、またはDVの不正対策に関するページをご確認ください。