グローバルCMOが担う多くの責任の一つに、事業を展開する市場の数にかかわらず、ブランド・アイデンティティが強力で、共有され、一貫したものにすることがあります。言うは易く行うは難しです。
ブランド・アイデンティティは、単なるロゴやキャッチフレーズではありません。それは、企業のバリュープロポジションの集合体、企業の持つ価値表現、企業文化、そして企業がどこに存在しても、認知され、信頼される本質そのものなのです。
チームが地理的に異なる市場に分散している中、異なる考え方の橋渡しをし、サイロ化を打破し、各地域の経験を共通の目標に向けて導くためには、どのような取り組みが可能でしょうか?
DoubleVerify(DV)では、ブランド・アイデンティティをスフィア(球体)として考えています。その球体の中心には、普遍的な要素が存在します。その球体が周囲の空気に触れあうことで、現地の文化、、顧客のニーズ、市場の動向に合わせて周囲の色に染まっていくのです。両者の要素が重要です。中心部分は一貫性を提供し、それを取り巻く外側の層は、はレレバンス(関連性)をもたらします。
グローバルなビジョンをローカライズする
まず、統一されたビジョンが起点となります。誰もが共感でき、支持できるものです。DVにおけるビジョンはシンプルです。「広告をより良くする」こと。弊社のすべての活動は、この基盤へと繋がっています。弊社のツールとイノベーションは、ブランドのデジタル投資をより効果的、より高いパフォーマンスで、かつ測定可能なものにすることで、ブランドの成功を支援するようにデザインされています。
この普遍的な中核がなければ、ブランドとは言えません。それは、ばらばらな事業活動の集合体にすぎません。弊社はそうではありません。しかし、普遍的な真理は、地域ごとに意味のある方法で表現されて初めて機能します。DVは単一の組織ではありません。弊社は単一のブランド・アイデンティティを持ちながら、地域ごとのチームが結束した総和であり、そこに弊社の強みが存在します。
実行の分散化
弊社の市場参入のアプローチは、非常にコンサルティング的です。弊社は、グローバル市場にバリュープロポジションを提供しつつ、各地域のニーズに真摯に耳を傾けます。これは、各地域における差異、顧客のニーズ、新たなトレンドや行動特性を理解するために、地域のチームに大きく依存していることを意味します。弊社の地域のリーダーは、DVのグローバル基準を順守しながら、顧客のニーズに合わせて実行を行う権限と裁量を有しています。私は、同じグローバルでのコア(中核)と一貫性を保ちつつ、各地域のチームが持つインサイトを活用し、適応していくことを重視しています。
実践におけるインパクト
このバランスが顕著に現れているのが、DV Impactイベントです。どのイベントも同じDVならではの雰囲気を持ちながら、一つとして同じものはありません。プログラムの約3分の1は、グローバルなコンテンツに充てられており、主に未来を見据えたイノベーションに焦点を当てた基調講演が市場を問わず行われます(ただし、常に、各地域のデータと事例でカスタマイズされています)。残りの3分の2は、地域主導のパネルセッション、ファイアーサイドチャット、地域のリーダーや顧客をフィーチャーしたストーリーで構成されます。この組み合わせにより、グローバルなイノベーションの方向性を取り入れながら、その市場のリアルなビジネスチャンスやチャレンジに基づいたものにしているのです。
結束力としてのストーリーテリング
これらのイベントなどは、単にインスピレーションを与えるだけでなく、グローバルチームと地域チームをつなぎ、各地域の成功事例の総和がグローバルなDVのストーリーであることを示しています。
これらを定期的に実施するために、弊社は市場間で毎週のオペレーショナルコールを実施して連携を保ち、毎月の全社ミーティングでは地域のチームが成功事例を共有しています。時にはこれらのセッションが戦略重視であることもありますが、多くの場合、成功事例を称えるために設計されています。それが優れたキャンペーンであれ、競争での勝利であれ。
表面的には、これらは日常的な「アップデート」に見えるかもしれませんが、これらは積み重ねることによる推進力を生み出します。こうした取り組みは、私たちの活動をより身近なものとし、各地域市場の総和こそが企業そのものであることを再認識させてくれます。
成長と進化
ブランド・アイデンティティを維持するもう一つの側面は、成長です。時には有機的に、時には買収を通じて、弊社は常に進化しています。
会社を傘下に加える場合、重視するのはテクノロジーやプロダクトだけではありません。その企業の文化、専門知識、そして考え方を自社に取り込むことです。このダイナミズムが、弊社のブランドを時代に応じた魅力的な存在にするのです。
弊社のモットーである「Verify(検証). Optimize(最適化). Prove(証明).」は、単なるマーケティングコピーではなく、ソリューションの進化を反映した組織原則です。各要素は、従来の強みと未来志向のイノベーションの両方へとつながっています。これが、普遍的なものと新しいものを調和させる方法なのです。
一つ一つの測定
最後に、各地域の市場でKPIを継続的に監視することが非常に重要です。弊社のビジョンが各地域レベルで評価され続けているかどうかを測定することは、単にチェックボックスにチェックを入れることではありません。それは、各市場の真のビジネスチャンスやチャレンジに取り組めているか? 各地域のチームがメッセージと実行を柔軟に調整できる権限を与えられているか?イベントやキャンペーンが、グローバルなものと同時に、地域特有のものであると感じられるか? といった疑問を問い続けることが重要です。
これらの問いに対する答えが一貫して「はい」であるとき、DVブランドがグローバルで目標を達成し続けていると確信できます。
ブランド・スフィア(球体)
本質的に、ブランド・アイデンティティは静的なものではありません。それは生き物であり、人々や文化、そして弊社が紡ぐ物語によって形作られます。これは繊細なバランス感覚が求められる行為であり、グローバルなブランド・アイデンティティを維持する上で重要な部分は、標準と物事の進め方を強化することです。同時に、各地域のチームに必要な自律性、柔軟性、自由を与え、go-to-market(市場参入)の取り組みを最大化に活かし、ソリューションとアプローチのインパクトを最適化します。DVブランドの確立には、一貫した本質、すなわち普遍的で単一の価値が不可欠です。しかし、世界各地域での市場展開は、地域ごとのニュアンスとインサイトに基づき、ニューヨーク、ロンドン、サンパウロ、東京で全く同一になることはありません。そして、それこそが理想的な姿なのです。