DoubleVerifyでは、第8回目となるグローバルインサイトレポートを発表しました。本レポートは、100市場、2,000以上のブランドから1兆インプレッションを超えるメディアの品質とパフォーマンスの傾向を分析しています。その結果、「Made for Advertising」(MFA)ウェブサイトの世界的な影響が浮き彫りになりました。

MFAウェブサイトは、訪問者に価値を提供することよりも広告収入を優先し、多くの場合、ユーザー体験が低く、サイト運営者の短期的利益の増大を目的としています。

MFAサイトは通常、以下の特徴のほとんど、またはすべてを満たしています:

  • コンテンツに対して高い広告比率:MFAサイトは通常、実際のコンテンツに比べて不釣り合いなほど多くの広告を掲載しています。このようなプラットフォーム上の広告は、1回のユーザー訪問中に頻繁に更新されることがあり、その結果、各閲覧者からの潜在的な収益が最大化されます。
  • 有料トラフィックへの依存: MFAサイトは、コンテンツの質やSEOによるオーガニックな成長に頼るのではなく、ソーシャルメディアなどの有料トラフィックのソースに大きく依存することが多くみられます。この戦略は、コンテンツの質や関連性に関係なく、即座にトラフィックを集めることに重点を置いています。
  • エンゲージメント戦術: MFAサイトのコンテンツは、ユーザーを延々とスクロールさせたり、同じサイト内の複数のページをクリックさせたりするように設計されています。このアプローチは、広告のインプレッションやクリックの可能性を高めることを目的としています。
  • コンテンツの複製: MFAサイトは、さまざまなドメインでコンテンツをそのまま再利用するのが一般的です。この手法では、最小限の労力で複数のサイトを迅速に作成できるため、オリジナリティや品質が劣ることが多くみられます。
  • 低い広告インテンシティ(注目度): MFAサイトでは、広告インテンシティが低いことが多く、評判の良いサイトと比較して、広告が長時間または頻繁に表示されないことを示しています。この指標は、ユーザーの広告へのエンゲージメントが最小限のサイトを特定するのに役立ち、さらには広告インタラクションの質よりも量を重視していることを示しています。

MFAサイトは、ブランド、パブリッシャー、消費者など、デジタル・エコシステムのあらゆるステークホルダーに影響を与えます。

  • ブランドへの影響: MFAサイトは、ブランドの広告効果を薄める可能性があります。低品質なサイトに掲載された広告は、意図した読者に届かなかったり、期待した成果を得られなかったりします。これは予算を浪費し、劣悪なコンテンツや質の低いユーザー・エクスペリエンスと関連付けられることで、ブランドの評判を損なう可能性があります。
  • パブリッシャーへの影響: MFAサイトは合法的なパブリッシャーに悪影響を与えます。こうしたプラットフォームは、視聴者と広告費の両方を質の高いコンテンツから遠ざけるからです。MFAサイトの急増は広告出稿の競争を激化させ、パブリッシャーの広告料金の低下を招くことが多くなります。さらに、このような低品質なサイトの存在は、オンライン広告全体に対する信頼を損なう可能性があります。
  • 消費者への影響: 消費者にとって、MFAサイトはオンライン体験を低下させる一因であり、インターネットの「改悪化」とも呼ばれる現象である。これらのサイトは、ユーザーの満足度よりも広告収入を優先し、イライラさせるナビゲーション、圧倒的な広告のロード(読み込み)、反復的で低品質なコンテンツにつながります。このような環境は、消費者が利用できる情報の質を低下させるだけでなく、広告疲れを引き起こし、広告のエコシステム全体に打撃を与えます。

MFAの成長

2023年6月、全米広告主協会(ANA)は、新世代のAIツールが不適切なコンテンツの制作を加速させているとの懸念がある中、MFAサイトがプログラマティックに購入された広告インプレッション(プログラマティックとはオンライン広告の自動売買)の21%を占め、広告費全体の15%を集めていると報告しました。

DVの分析によると、2023年のMFAインプレッション量は前年比19%増となりました。この増加は主に、MFAと非MFAの特性が混在するハイブリッドサイトに表示される「ロー・ティア(Low-tier)」のMFAインプレッションが73%増加したことに起因します。

AIのつながり

Copyleaksの調査によると、ChatGPT 3.5がリリースされた2022年11月から2024年3月までに、ウェブ上のAIコンテンツが8,362%急増していることが明らかになりました。さらに、最近の多くの研究では、オンライン上の生成AIコンテンツの増加が、スパム、誤報、詐欺、低品質コンテンツの増加と広く関連しています。

このような背景から、DVはSapio Researchに依頼して、AIとオンラインコンテンツの質の関連性について世界の広告主1,000人を対象に調査を実施しました。調査の結果、回答者の57%がAIが生成するコンテンツはデジタル・エコシステムにとって重要な課題と考えており、54%が生成AIがメディア品質を低下させていると考え、50%がMFAと低品質コンテンツの拡散をデジタル広告の状況に対する最大の脅威と認識していることが明らかになりました。

MFAサイトとAIが生成したコンテンツの関連性をさらに探るため、DVはデジタルプラットフォーム全体で複製されたコンテンツとAIが生成したコンテンツを検出・分析する独自の技術を構築しました。DVはこの高度な技術を使って、最も深刻なMFAの特徴を示す「ハイ・ティア(High-tier)」のMFAサイトのうち30数サイトのサンプルを分析しました。DVは以下の例を含め、AIが生成したと思われるコンテンツを複数発見しました:

あるユーザー・セッションの間、HeroInvestingの記事には70以上の広告が表示され、そのうちいくつかの広告はおよそ15秒ごとに自動更新されました。(問題の記事はHeroInvestingによって削除されたようです)。

同様に、Notableyの記事には最初から最後まで110以上の広告が掲載され、その中には自動再生されリフレッシュされ続ける複数の動画広告も含まれていました。CarterFiveの記事にも40以上の広告があり、同様の動作を示していました。

MFAとユーザー・アテンション

MFAは、クリック数やビューアビリティなどの特定のKPIを見ると、高パフォーマンスに見えるかもしれません。にもかかわらず、DVは、MFAサイトは他メディアと比較して、ディスプレイ広告では7%、動画広告では28%もアテンションが低いことを発見しました。特に “ハイ・ティア(High-tier) “のMFAは、アテンションの基準値を25%下回っていました。

この平均を下回るアテンションのパフォーマンスは、エンゲージメント(ユーザーのタッチ、画面の向き、動画の再生、音声コントロールのインタラクションなど)よりも、露出(注目度、視聴可能時間、画面占有率、見やすさ、聞き取りやすさなど)の低さが原因です。一方、MFAは特定のエンゲージメントのために明確に設計されているため、露出とエンゲージメントの両方を考慮した包括的なアテンション基準の測定の必要性がさらに強調されています。

DoubleVerifyのCEOであるMark Zagorskiは、次のように述べています。「MFAコンテンツは、生成AIによって急増しています。さらに、非常に問題のあるコンテンツは、ブランドにとってますます重要な指標となっているアテンションという点で、非常に低いパフォーマンスを示しています。。広告主がリアルタイムで問題のあるMFAコンテンツを特定し、測定し、回避することは、より優れた、真のパフォーマンスを促進するために非常に重要です。」

生成AIの発展に後押しされたMFAサイトの急増は、広告業界にとって重大な岐路を示しています。DoubleVerifyのレポートが示唆するように、これらのサイトの影響を理解し、低減することは、ブランド、パブリッシャー(媒体社)、消費者の利益を保護し、信頼できるデジタル広告環境を確保するために不可欠です。

調査方法

本レポートでは、DVテクノロジーを用いて、プレビッド(入札前)とポストビッド(入札後)の両方で1兆回以上のインプレッションを分析し、北米、中南米、EMEA、APACの市場ごとの詳細な分析を提供しています。2023年1月から12月までのデスクトップ、モバイルウェブ、モバイルアプリ、コネクテッドTV(CTV)の動画およびディスプレイにおけるインプレッションを対象としています。この調査には、Sapioが北米、中南米、EMEA、APACの広告主1,000人を対象に実施したグローバル調査も含まれています。DVは2024年に段階的なMFAカテゴリーを導入し、その手法を2022-2023年のインプレッションに適用して前年比分析を行いました。さらにDVは、AIが生成した可能性が高いコンテンツ事例を特定するため、「ハイ・ティア(High-tier)」のMFAウェブサイトの30を超える事例を分析しました。